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2年生インテリア第四課題 総評・参考作品コメント
2年生第4課題 インテリア
「幸せのカタチ」
担当教員: 藤森泰司 非常勤講師(出題) / 米谷ひろし 准教授


●総評
デザインの形式を導き出す時、そこには多くの与件がある。むしろそうした与件を積極的に解釈し想像力に結びつけていくことこそ、リアリティのあるデザイン行為だといえる。インテリアデザインという領域には、特にその力が求められる。ゆえに、通常のデザイン課題では、いくつかの与件を提示し、そこからデザイン作業が始まっていくことが多い。ただ、学生においては、与件の前に、自身が何に興味を持っているのか、自分の好きなことって何なのか…という、素朴な疑問や衝動をカタチに結びつけていく経験が最も重要だと思われる。すぐに成果や結果を出そうとせず、自分や社会に対する向き合い方を、課題という経験の中で学ぶのである。
この「幸せのカタチ」という課題には、いわゆる与件はない。自分にとって「幸せ」とは?という素朴だが難しい問いに向き合う演習である。「デザイン以前」の問いといえるだろう。本年度の学生は、そうした問いに対して非常に素直に取り組んでいたように思う。悩みながらも、自分に向き合い、自分のやってみたいことを突き詰め、空間表現に結びつけた学生の試みには、とても魅力があり、デザインという形式の枠組みを超えて訴えかけてくるものがあった。

●参考作品
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髙瀬 夏来
縮尺の異なる赤い段ボール製の椅子を、多摩美の外部キャンパス全体にちりばめた非常にスケールの大きな作品。単純な方法で、普段見慣れている風景を別の意識を持って眺めてみることを促している。認識できないくらい遠くはなれた場所にも作品を置くことで、日常の知覚を拡張するような、不思議なイメージの広がりがあった。




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狩野 梨緒
「お母さんの作った卵焼きが好き」という素朴な幸福感を、母親が卵焼きを作る過程の写真を使って巨大なイメージ(モザイクアート)に変換した。そして実際に本物の「卵焼き」とイメージを融合させることによって、包みこまれるような視覚とリアルな味覚に訴える力強い表現となった。




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小倉 奈穂
自身の思い出の「もの」を、「言葉(小さなメモ書き)」と共に大小様々な白い棺桶に閉じ込めた作品。終わりと永遠という両義的な意味を感じさせる棺桶を、幸福を大切に閉じ込める装置に見立て、日常のささやかな出来事の積み重ねが幸福に結びついていることを強く感じさせた。




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田中 萌
女性が身体に新しい生命を宿す姿を、幸福感に満ちた大切な時間/瞬間として、美しく包み込む白い衣服を提案。その衣服をまとった実際の女性二人と、カラフルなイメージ映像を融合させることによって、衣服がメディアであることを再認識させる作品となった。




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藤田 はるな
コンクリートの隙き間や、あらゆる場所で生命力を見せる小さな植物。その植物達をある距離から俯瞰して眺めると、幸福なメッセージを伝える形式になっている…という詩的な作品。校内の床仕上げであるタイルの目地に合わせて、アメリカンフラワーという合成樹脂を使用した造花(ここでは草木)を低く配置させた手法が成功していた。




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徳田 可奈子
自身が日常生活の中で感じるささやかな幸福を、見事な手書きのアニメーションで表現した作品。様々な立場の人間の視点を描くためにキャラクターを作り、自分ではなくキャラクターにそれぞれの「幸せ」語らせることで、誰もが共有できる普遍的なイメージを引き寄せていた。




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北原 皆
テーブルとチェア四脚とテーブルウェアが作る、見慣れた食卓のシーンを真っ白な原寸大のオブジェとして表出させた。しかし、よく見るとテーブルとチェアの平面形状が矩形ではなく、座ると自然に中央に向くようにほんの少しだけ歪んだ形式になっている。単純な操作のみで、あたりまえの風景の大切さと再考を同時に促す装置となった。




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柳田 里穂子
眠りにつく瞬間、現実でもなく夢でもないその間、つまりは「まどろみ」の世界を、どんな立場の人にも訪れる幸福な世界観として表現した作品。大量の柔らかなクッションと大きな布の間に身体ごと入り込める空間装置を作った。「まどろみ」の瞬間をリアリティをもって体感してもらおうとするエネルギーに溢れていた。

(以上8名順不同)
 
文:藤森泰司

(to)
by edd-news | 2011-02-16 09:44 | Grade 2
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