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デザイン2建築コース第一課題
2年生必修授業デザイン2、「建築コース」第一課題の講評をご紹介します。

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課題出題者 古暮和歌子 講師(写真右) 
ゲスト講評 平山達 名誉教授(同中央)
課題副担当 京野弘一 講師(同左)

(is)



 
<古暮先生総評>

一つの小さな建物をデザインすることは、実は都市に仕掛けていくこと(この街の将来像を語り、人々の新たな生活スタイルを提案して実現していく)そのものであることに気付き、自分なりの答え=デザインを見つける6週間である。

プロジェクトは敷地の読み込みと、自分なりの「代官山にこれを仕掛けて東京をかえていく」ストーリーの構築から始まった。そのストーリーが実行される為の様々な生活シーンを想起し、今回はマンガという手法で追求した。(マンガはパースと違って決まっていない所は宙ぶらりんにして先に進めるので、初期段階には役立つ。)同時に機能・構造・光・風・音といった環境全てについて一つ一つ考えていく。

ある日ばらばらだったこれらの事が一つのアイディアのもとに解け始め、最終解へとダイナミックにつながった。そして「自分はどんなアートが欲しいか」から「街はアートをどう欲しているか」へ意識が成長しプロフェッショナルとしての第1歩が踏み出せたと思う。

講評会後出来上がった図面や模型の中身を「歩いて」いくとき、創る、という醍醐味が味わえたのではないだろうか。荒削りながら盛りだくさんのプログラムをこなして、もうこんなのいやだと思ったかもしれないが、(やはり空間プログラムと構造を結びつけて考える事は弱いので次の課題からしっかり始めてください)何年かたち、やってよかったと気づくと思う。良い作品が沢山できた。是非2年後の卒制開始までにデザインとともに、社会的視点もしっかりと熟成させていくことを望む。


<参考作品紹介>

植野 由里雅
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ギャラリーって、アートってどんなものなのか悩み抜いて出た答えは「霜柱」。「街の中に大切なものをもちこんだ空間」がギャラリーなのだ、として「霜柱のギャラリー」がさわやかなカフェの空間と半分解け合いながら街へ語りかけている。最後まで粘り抜き、斜めの軸線を取り入れる事で中庭が街とともに生きてくる、すばらしいデザインを獲得した。


加賀谷 静
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細い柱が林立し、その上空からは木漏れ日がさす、それが今の代官山に必要であると確信してからこの美しい空間ができるまで、七転八倒した。サービス導線の処理、作品を鑑賞することとお茶を飲む事がどのようにゆったりと交わるか、個々の絶妙な距離感、そしてそれらを可能にする架構システム、、、これらに真正面から向き合った。与条件とはデザインを窮屈にするものでなく、逆に本当に必要なことがらへ絞り込んでいくためのエンジンである、と証明できる力強い作品である。


北野 航太郎
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新しい代官山の魅力:ヒューマンスケールの反復でありながらダイナミックな生活:をいかに成り立たせるか、に腐心し、成功している。建築として構造的、機能的に消化しきれていないところが今回多々あるが、逆にそれらをつきつめることで魅力が増すのが本当のデザインである。「緑に木」という要素が北野的ポップな表情を帯び始めている。人々へのきめの細かい愛情も感じられ、今後楽しみにしている。


久語 咲穂
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フラットルーフゆえ一見単純に見えるこの作品だが、細分化されたカーペット状の床がまずそれぞれの場を規定し、半透明のしきりが狭い敷地に程よい奥行きを与えていく。代官山ヒルサイドテラスで槙文彦が展開した「奥」の表現と道を挟んで、新たな「奥」を提示し始めている。途中考えすぎて複雑になりすぎたのを、自分で割り切り、大切なものに集中させていく過程を経て出て来た空間は素敵だ。


坂本 真梨
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構造も光のコントロールもまだ未消化なのだけれど、やりたい事をなんとか形にして、新しい魅力に満ちている。街から生えて来た不思議な公園のような建築である。箱状のオブジェが3階では公園の家具のように人々におだやかなカフェ時間を提供し、ゆるやかに光をおとしていく。1階ではこのオブジェは微妙に離陸し、建物の床は街へとつながっていく。建築の可能性の楽しさに作者は気づいたのだろう。

渋谷 黎
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単純な2棟といくつかの分節なのだけれど、外部と内部がゆるやかにつながり、それが街まで浸透していく素敵な時空間に仕上げている。これにたどり着くまでにいくつものスタディーがあるので、一見緩いけれど強度を持った構成を獲得している。これが実物になったときには同じ「布」というメタファーのグラデーションの中で、トイレや倉庫や事務所と行った場所がきちんと作り込まれ、より微妙で深い空間へとなっていくであろう。

戸石 晃史
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代官山の一つの特性である「普通でないフツーのおうち」。それが道でもなく部屋でもなく隣地同士の隙間でもないクーカンで山積みにされていくとどうなるのか、に挑んだ作品である。個々のアート作品が都市との関係においてその暴力性を隠す隠れ家みたいな様相も帯び始めている。ここではもはやカフェはのんびりお茶を飲む場所ではない何かに変わり始めている。あいまいそうで実は強烈なもの言い:秀作である。

正木 暁
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写真のギャラリーである。無数の写真と窓で切り取られた街が並列され、不思議な「今」を感じながら人々は空間を巡る事になる。建築の中と外、街とアート作品とお茶を飲む行為をどう混じり合わせるのかが今回のテーマでもあるのだけれど、閉じながらもつながる独特の時間感覚を、うまく作り出している。坂道の敷地に螺旋状の構成をこのプログラムに当てはめたのは、内部空間の縦長のプロポーションや、幅の変化を丁寧に作り込んだ結果成功し、のびやかな良い作品となった。
by edd-news | 2012-01-10 11:09 | Grade 2
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